調味料や洗剤で汚い十円玉は還元できない? 前編
イントロ
調味料や洗剤で十円玉を綺麗にする実験は夏休みの自由研究で
定番?と思われる実験の一つです。
この実験で十円玉が綺麗になるメカニズムは表面の錆が調味料や
洗剤に含まれる酸によって溶かされて取り除かれるためなのです。
しかし、綺麗になるメカニズムが「酸によって還元されたから」という
間違った情報が某Q&Aサイトや教育系のページなどで見られました。
そこで、十円玉が綺麗になる理由が還元では無いことを証明する実験を紹介します。
前編では実験の下準備について紹介します。
必要な物(後編で使うものも一緒に書いてます)
・100ml程の水が入るガラス製容器…綺麗に洗ったジャムなどの空き瓶。
・250ml以上の水が入るガラス製容器…綺麗に洗ったジャムなどの空き瓶。
・耐熱性のガラス製容器…綺麗に洗ったジャムなどの空き瓶。
・銅製の針金…100円ショップやホームセンターで購入できます。
・9V電池…100円ショップの物が安いのでオススメです。
・ニッパかラジオペンチ…銅製の針金を切るのに使います。100円ショップで買えます。
・食塩
・ろう斗(ロート、じょうご)…100円ショップで購入できます。
・コーヒーフィルター……100円ショップで購入できます。
・プラスチック製のマドラーやスプーン…金属性の物で代用は厳禁です。
・トイレ用洗剤…成分に塩酸とあるもの。色が付いてないタイプを推奨
・お酢
・スポイト…無くても大丈夫です。あると操作が楽になります。
・プラスチック製のカップ…100円ショップ等でマヨネーズやタルタルソース、
ドレッシング入れとして販売されています。金属製の物での代用は厳禁です。
実験方法・やりかた
1. 酸化銅(Ⅱ)(十円玉の錆の成分の一つ)を作る
① 銅製の針金をペンや鉛筆に巻き付けて、図1のように長さ5cmぐらいのバネを作る。
② バネが付いた銅線をバネから20 cmぐらいのところで切る。
③ ①と②で作ったものをもう一つ作る(バネのついた針金が2本できる)。
④ 100ml程の水が入るガラス製容器にバネ状の大部分が付かるぐらいまで水を入れる。
⑤ ②に食塩一つまみを入れて溶かす。
⑥ 二本あるバネ付いた針金のうち、1本の針金部分を9V電池のー極に
巻き付けて取り付ける。
⑦ 二本あるバネ付いた針金のうち、もう1本の針金部分を9V電池の+極に
巻き付けて取り付け、セロハンテープで取り付ける。
⑧ バネの付いた針金のバネの部分を⑤の食塩水に入れる。
⑨ 2~3時間待つ
⑩食塩水からバネの部分をゆっくりと引き上げる。
⑪ 250ml以上の水が入るガラス製容器とろう斗とコーヒーフィルターの組み合わせで
⑩で生じている沈殿をろ過する準備をする。
⑫ 沈殿をかき混ぜてから1秒後に少しずつろ過を繰り返す。
この時、茶色の固体はなるべくコーヒーフィルターの方に流れないようにする。
⑬ ⑫が終わったらコーヒーフィルター中の沈殿に水を30~50ml静かにかけて
付着している食塩水を洗い流す。
⑭ ある程度水気が切れてから沈殿を耐熱性ガラス容器に移す。
⑮ 耐熱性ガラス容器に入れた沈殿をオーブントースターで黒くなるまで加熱する。
身近な物で色が変わる結晶を作る(硫酸ネオジムアンモニウムの合成) 後編(Syntheses Neodymium Ammonium Sulfate at home Part 2 of 2)
前編では色が変わる結晶の作り方について紹介しました。
後編では実験の原理についてQ&A形式で説明していきます。
解説
- 解説
何故、ネオジム磁石の表面を削るのか?(操作①)
結論から言うとネオジム磁石がトイレ用洗剤に溶けるまでの時間を
短縮するためです。何故、ネオジム磁石の表面を削った方がトイレ用洗剤に
溶けるまでの時間が短くなるかというと、ネオジム磁石は鉄、ネオジム、
ジスプロシウムという金属とホウ素という金属以外の物質からできています。
ネオジム磁石を構成する金属というのは錆びやすい金属であるため、
その表面はニッケルというそこそこ錆びにくい金属で覆われています。
ニッケルはトイレ用洗剤(塩酸)にゆっくりと溶けます。
そのため、ネオジム磁石の表面を削らなかった場合、ニッケルが溶けるのに
時間がかかってしまう分、削らなかった場合に比べて溶ける時間が
長くなってしまいます。
ネオジム磁石にトイレ用洗剤を加えると何が起きているのか?(操作④~⑥)
今回、使用したトイレ用洗剤には塩酸が含まれています。
ネオジム磁石に使用されている金属は錆びやすい、見方を変えると
他の物質と反応しやすい金属が使われています。
そのため、ネオジム磁石を構成する金属は塩酸と反応すると水素を発生しながら
水溶性の物質(FeCl₂やNdCl₃、DyCl₃)という物質が生じます。
トイレ用洗剤の大部分は水であるため、生じた水溶性の物質は溶けていくため、
結果、磁石が溶けていくことになります。
【反応式】
Fe + 2HCl→FeCl₂ + H₂ (鉄 + 塩酸→塩化鉄(Ⅱ) + 水素)
2Nd + 6HCl→2NdCl₃ + 3H₂ (ネオジム + 塩酸→塩化ネオジム + 水素)
2Dy + 6HCl→2DyCl₃ + 3H₂ (ジスプロシウム + 塩酸→塩化ジスプロシウム + 水素)
【補足1 塩酸について】
塩酸は塩化水素という物質を水に溶かしたものです。
そのため、「金属 + 塩酸→~」という書き方は本来は間違いであり
正しくは「金属 + 塩化水素→~」になります。
【補足2 元素記号と化学式について】
Fe:鉄, Nd:ネオジム, Dy:ジスプロシウム, HCl:塩化水素, H₂:水素
FeCl₂:塩化鉄(Ⅱ), NdCl₃:塩化ネオジム, DyCl₃:塩化ジスプロシウム
磁石が溶けた後に沈んでいる黒い粉は何か?(操作⑦)
結論から書くと、黒い粉の正体はホウ素です。
この内、金属は塩酸(トイレ用洗剤)で溶けてしまいますが、ホウ素は
塩酸と反応しません。また、ホウ素は水にも溶けないので沈んだ状態で
残ります。
黒い粉の正体はホウ素でしたが磁石が溶けた後に浮かんでいる
磁石の外側は、書くまでもないですがニッケルになります。
硫酸アンモニウムを加えてできる固体(沈殿)は何か?(操作⑧)
磁石が溶けた後のトイレ用洗剤中には反応で生じたFeCl₂やNdCl₃、DyCl₃が
水に溶けた状態になっています。これらの物質が水に溶けると
+の電気を帯びたイオンである陽イオンと-の電気を帯びたイオンである
陰イオンに分かれます。そして、ある物質が陽イオンと陰イオンに
分かれることを電離といいます。また、FeCl₂などと同じように
硫酸アンモニウムも水に溶けると電離します。
【電離】
FeCl₂→Fe²⁺ + 2Cl⁻ (塩化鉄(Ⅱ)→鉄(Ⅱ)イオン + 塩化物イオン)
NdCl₃→Nd³⁺ + 3Cl⁻ (塩化ネオジム→ネオジムイオン + 塩化物イオン)
DyCl₃→Dy³⁺ + 3Cl⁻ (塩化ジスプロシウム→ジスプロシウムイオン + 塩化物イオン)
(NH₄)₂SO₄→2NH₄⁺ + SO₄²⁻ (硫酸アンモニウム→アンモニウムイオン + 硫酸イオン)
【補足3 イオン式について】
Fe²⁺:鉄(Ⅱ)イオン, Cl⁻:塩化物イオン, Nd³⁺:ネオジムイオン,
Dy³⁺:ジスプロシウムイオン,NH₄⁺:アンモニウムイオン, SO₄²⁻:硫酸イオン
ここで軽くまとめると磁石が塩酸(トイレ用洗剤)と反応するとNdCl₃
という物質が生じます。そしてNdCl₃はトイレ用洗剤中の水に溶けて
Nd³⁺とCl⁻に電離しています。
Nd³⁺を含んでいる水に電離するとSO₄²⁻を生じる物質を(沢山)加えると
Nd³⁺とSO₄²⁻が結びついて硫酸ネオジムという水にやや溶けにくい
物質が生じるため沈殿が生じます。今回の実験では硫酸イオンを
生じる物質として硫酸アンモニウムを用いました。
厳密にはNd³⁺とSO₄²⁻が結びつく際には元々SO₄²⁻と結びついていた
陽イオンが取り込まれてしまうため、生じている沈殿は
【補足4 本当に沈殿している物質について】
水和物とは、ある物質の結晶の空間中に一定の割合で水(結晶水)が
含まれている物質のことを言います。
そして、肝心の化学式についてはNd³⁺とNH₄⁺、結晶水がどの割合なのか
解っていないため化学式は解っていません。
詳細は番外編で書きますが、(NH₄)₂SO₄・Nd₂(SO₄)₃・8H₂Oではないかと
考えています。
固体(沈殿)をトイレ用洗剤で濯いでから水に溶かすのか?(操作⑫~⑮)
今回、目的の物質(必要としている物質)は硫酸ネオジムアンモニムです。
生じた硫酸ネオジムアンモニムは粉状であり、不純物として磁石と塩酸の
反応で生じたFeCl₂や未反応の(NH₄)₂SO₄が含まれた状態になっています。
そのため、不純物を取り除くと同時に硫酸ネオジムアンモニムを粉から
綺麗な粒ぐらいの大きさの結晶にするために再結晶を行う必要があります。
再結晶の原理については硫酸アンモニウムの精製のページを参照してください。
結晶をトイレ用洗剤と水で濯ぐのは何故か?(操作⑰~⑱)
再結晶を行うと不純物は液体(水)に溶けたままになります。
結晶を取り出すと、結晶の表面は不純物が含まれている水が付いたままに
なってしまいます。同時に、この状態で乾燥させると水だけは蒸発して
結晶の表面に不純物が残留したままになってしまいます。
そのため、不純物が付いた水を取り除くためにトイレ用洗剤(塩酸)と
水で表面を洗浄する必要があります。
太陽と室内の光では結晶の色が違うのは何故か?(操作 2.①、2.②)
最初に、私たちが見ている物に色がついて見える理由について
植物の葉っぱを例に説明します。葉っぱが緑色に見えているのは
様々な色が混ざった太陽の光(白色)の中で赤や青色の光を吸収し、
残った緑色の光を反射しているからです。
どの色の光が吸収されると何色に見えるかは補色を
使うことでわかります。葉っぱの例で考えると赤色の補色は水色、
青色の補色は黄色なので葉っぱは水色と黄色が混じった色である緑色に
見えることになります。
硫酸ネオジムアンモニウムにはオジムイオン(Nd³⁺)が含まれており、
Nd³⁺は570~590nm(黄緑色)の光を吸収する性質があります。
黄緑色の補色は紫色であるため太陽の光は赤紫色よりも
太陽の光の下で紫色に見えます(図1 左)。
一方で、室内の明かりでは青~緑色に見えます。太陽の光は様々な色の
光が混じりあっていますが、室内の明かりも様々な色が混じりあっていますが
特に青色や緑、黄色の光が強いです。そのため、室内の明かり(種類によります)
では黄緑色の光を吸収すると青色や緑色の光が残るため硫酸ネオジムアンモニウムの
結晶は青~緑色に見えます(図1 右)。
【補足5 結晶が茶色い】
もし、結晶の色が太陽の光の下でも室内の明かりの下でも結晶が
茶色っぽい場合は不純物としてFe³⁺が含まれていることになります。
茶色が酷い場合はトイレ用洗剤を加えて弱い酸性にした水で再結晶を
することで茶色を減らすことができます。ただし、再結晶を行うと
その分の時間と労力が必要になりますし、得られる結晶の量が
減ってしまうデメリットがあります。
身近な物で色が変わる結晶を作る(硫酸ネオジムアンモニウムの合成) 前編(Syntheses Neodymium Ammonium Sulfate at home Part 1 of 2)
イントロ
身近に手に入るものを使って色が変わる結晶(硫酸ネオジムアンモニウム
の結晶)の作り方とその作り方の原理について紹介します。
前編では実験のやり方を説明し、後編ではその解説をしていきます。
必要な物
・ネオジム磁石(直径約0.6mm,高さ約3mm) 2個…100円ショップで8個入りの物。
・トイレ用洗剤…成分に塩酸とあるもの。色が付いていないタイプを推奨。
・精製した硫酸アンモニウム…ホームセンターや通販で購入した硫酸アンモニウムを
・ガラス製の容器 3個…綺麗に洗ったジャムの空き瓶など
・金属用のやすり…100円ショップで購入できます。
・液体の体積が測れる道具…メスシリンダーなど。金属製の物は使用厳禁!
・ろう斗(ロート、じょうご)…100円ショップ等で購入できる。
できれば小さいサイズを推奨
・コーヒーフィルター…100円ショップで購入できます。
・プラスチック製のマドラーやスプーン…100円ショップなどで購入できます。
金属製の物は使用厳禁!
・天秤(0.1gまで測れるタイプ)…キッチングッズを販売している店で購入できます。
・ラップ
・輪ゴム
実験方法・やり方
※腐食性の液体を使うので金属製の物(装飾品など)に
触れないように作業してください!
1. 結晶を作る
① ネオジム磁石2個の丸い面を少し黒っぽくなるまで(図1の赤丸で囲ったぐらい)削る。
※自分の指を削らないように注意する事!
※時々、濡らしたティシュ等で拭くと見やすくなります。
図1 丸い面を削ったネオジム磁石(実験で使うのは2個です)
② 削ったネオジム磁石2個の丸くない面(図1参照)どうしをくっつける。
③ ②の状態を維持しながらガラス製容器に壁面によりかかった状態で入れる。
④ ネオジム磁石を入れたガラス容器にトイレ用洗剤19 mlを静かに注ぎ入れる。
⑤ ④のガラス容器にラップを静かに被せて、約1日静かに置いておく。
⑥ 穴の開いた磁石の外側だけが浮いているか確認する。
⑦ ろう斗とコーヒーフィルターの組み合わせで⑥の液をろ過する。
⑧ ろ過した液に精製した硫酸アンモニウム1.1gを少しずつ、かき混ぜながら加える。
硫酸アンモニウムを加え終えても沈殿ができない場合は追加で1.1g加える。
⑨ 硫酸アンモニウムを加え終えてから約5分間かき混ぜ続ける。
⑩ 生じた粉状の固体(以下、固体)が沈むまで静かに置いておく
⑪ 固体が沈み切ったことを確認したら、容器をゆっくりと傾けて液体だけを
別の液体に移しいれる。
⑫ 固体にトイレ用洗剤2.5mlを加えて軽く混ぜたら再度⑩~⑪を行う。
⑬ 固体に水25mlを少しずつ加えてかき混ぜる。
⑭ 容器にティッシュを被せて輪ゴムで固定する。
⑮ 1~1.5月置いておくと水が減って四角い結晶が出てくる。
⑯ 結晶を取り出す。純度的な意味で綺麗さを求め無いであれば⑲に進む。
⑰ トイレ用洗剤で結晶表面を素早く濯ぐ(結晶を沈めてすぐに取り出す)
⑱ 水で結晶表面を素早く濯ぐ(結晶を沈めてすぐに取り出す)
⑲ 室温で結晶を乾燥させる
2. 色の変化を確認する
① 作った結晶を太陽の光が当たっているところで観察する。
② 作った結晶を夜になってから(または太陽光が無いところ)で観察する。
※下の画像のように光によって色が変わって見えれば成功です。
後編に続く
肥料用の硫酸アンモニウムを精製する&硫酸アンモニウムの結晶を作る
イントロ
このブログで紹介する実験のいくつかでは硫酸アンモニウムという物質を
使います。硫酸アンモニウムは(窒素)肥料として使われている物質で、
ホームセンターや通販サイトで「硫酸アンモニウム」または和名の略称である
「硫安」という商品名で販売されています。
肥料用としての硫酸アンモニウムには製造時に混入した不純物が
含まれているため、そのまま実験に使うことができません。
そのため、純度をよくするための下ごしらえ(ろ過と再結晶による精製)を
しておく必要があります。
また、ここで紹介する方法では最終的に硫酸アンモニウムの綺麗な
結晶ができるため、結晶作りに興味がある人やちょっとした自由研究には
(たぶん)向いているかもしれません。
必要な物
・硫酸アンモニウム(硫安)…ホームセンター等で購入できます。
・精製水…ドラッグストア等で購入できます。水道水でも代用できます
・耐熱性ガラス容器 2個…綺麗に洗ったジャムの空き瓶など
・プラスチック製のマドラーやスプーン…100円ショップ等で購入できます。
・小さい鍋
・コーヒーフィルター
・ろう斗(ロート、じょうご)…100円ショップで購入できます。
・ティシュ
・ラップ
・輪ゴム
実験操作・やり方
① 耐熱ガラス容器にろう斗を入れ、ろう斗にはコーヒーフィルターをセットしておく。
② ①とは別の耐熱性ガラス容器の半分ぐらいまでお湯を入れる
② お湯を入れた耐熱性ガラス容器に硫酸アンモニウムをかき混ぜながら入れる
※硫酸アンモニウムがお湯に溶けるとお湯の温度が下がります。
③ 硫酸アンモニウムが溶けきれなくなったら、普通のお湯を入れた鍋に
②の耐熱ガラス容器を入れて湯煎をする。
※耐熱ガラス容器がお湯に浮いて、ひっくり返らないように注意する。
④ 湯煎しながら耐熱ガラス容器内をかき混ぜる。
⑤ 溶け残っていた硫酸アンモニウムが溶けて無くなった場合、
溶けきれなくなるまで、硫酸アンモニウムを追加で加えてかき混ぜる。
初めから、湯煎しても全く溶けない場合は⑥に進む。
⑥ 硫酸アンモニウムが溶け残っているのを確認したら湯煎をやめる。
⑦ 硫酸アンモニウムが溶けているお湯を①で準備したろう斗とコーヒーフィルター
の組み合わせでろ過する。
⑧ ⑦でろ過したお湯が入っている耐熱ガラス容器にラップを被せて
室温ぐらいになるまで冷ましておいてから冷凍庫に入れる。
⑨ 一晩経つと硫酸アンモニウムの結晶が容器内側の底面と壁面に確認できる。
⑩ 耐熱ガラス容器をゆっくりと傾けて中に入っている水と浮いている氷を捨てる。
⑪ 硫酸アンモニウムの結晶が入った耐熱ガラス容器にティシュで蓋をして
風通しの良いところに数日間置いて乾燥させると肥料よりも純度が良い
硫酸アンモニウムになる。
実験操作の解説
ろ過
今回、肥料用の硫酸アンモニウムの純度を高めるためにろ過と再結晶という
操作を行いました。実際にやってみて気が付いたと思いますが、肥料用の
硫酸アンモニウムには黒や茶色の粉が混じっています。
硫酸アンモニウムを溶かした水(お湯)をコーヒーフィルターでろ過することで
この粉を取り除くことができます。
再結晶
ろ過は液体(今回だと水)に溶けない物質を取り除いたり、取り出したりする事は
できますが、液体に溶けている不純物を取り除くことはできません。
そのため、再結晶という方法を行いました。温度によって溶けきれる量が
異なることを利用した分離(精製)方法です。
具体的に言うと硫酸アンモニウムに限らず塩や砂糖といった水などの液体に
溶ける物質の量は物質ごとで異なります。
そしてある量の液体に溶けることができる物質の質量を溶解度といいます。
加えて内容が重複しますが溶解度は温度によって異なります。
水100g当たりの硫酸アンモニウムの溶解度は0℃で70.5g、80℃で94.1g、
100℃で102gになります。そのため、100℃の水100gに硫酸アンモニウムを
102g溶かしておいて、この水を0℃に冷やします。
0℃の水100gには70.5gしか硫酸アンモニウムは溶けることはできないので
102-70.5=31.5gの硫酸アンモニウムが溶けきれなくなって固体として出てきます。
ここでもしも、硫酸アンモニウムよりも溶解度が大きい(=よく溶ける)不純物が
含まれていた場合、不純物は水に溶けたままになるため不純物を除去できます。
補足
再結晶の原理で、不純物は液体(今回は液体)に溶けたままになります。
けれども、操作⑪時点の硫酸アンモニウムの表面は不純物が含まれている
水で濡れています。そのため、本来であれば不純物が含まれる水を
取り除く必要があります。
実験室レベルの実験であれば、表面に付着した不純物を含む液体を
除去する操作を行います。
具体的には、生じた結晶をろ過で集めてから、(ろ紙上の)結晶に
不純物が含まれていない液体をかけて表面の不純物を洗い流す操作(洗浄)を
行います。ただし、論文によっては作った物質の結晶を洗浄しないものも
あったりします。
今回の場合、硫酸アンモニウムという水に溶けやすい物質を扱うことや
初めてやる人でも楽にできることを考えて洗浄操作を省きました。
加えて、洗浄操作を省いても紹介する実験に問題無いことは確認しています。
家でできる・身近なものでできる実験
はじめに
突然ですが、「家でできる実験」や「身近な物でできる実験」と聞いて
どういったものを思い浮かべますか?
ほとんどの人は夏休みの宿題で自由研究でやった汚い十円玉を綺麗にする
実験や紫キャベツの湯出汁の色を変える実験などを思い浮かべると思います。
確かに「家でできる実験」や「身近な物でできる実験」の中には
小中学生の自由研究でやったような実験も含まれていますが、
それ以外にも様々な物を使って工夫することで色々な実験をすることが可能です。
このブログでは身近な物を使って、家でできる実験とその楽しさ、
化学に関する話を伝えたいと思います。
勿論、自由研究でやるような実験でも言えることなのですが、
100%安全にできる実験というのはありません。
そのため、このブログで紹介する実験を行う際には気を付けて
自己責任で行ってください。
このブログの歴史について
元々、家で行える実験などを"ヤフー知恵ノート"に掲載していたのですが、
サービス終了となってしまいました。
その後、私(著者)とその友人は"身近な物で化学実験(仮)"というブログで
知恵ノートで紹介してきた主要な実験などを紹介していました。
しかし、著者も友人もブログを始めてすぐに忙しくなり、結局のところ
そのブログはほぼ放置状態になりました。
その後、私(著者)は少し余裕ができたことや折角やったことが無駄になるのは
勿体ないと感じてブログを初めからやり直すことを決め、このブログを開設しました。
著者について
どっかの大学院で化学系の研究をしていた量産型院卒(修士)。
大学院を出たくせに頭は悪いわ、説明は下手などなど、いわゆる使えない院卒として
某メーカーの研究開発部門で働いている。