家でできる実験

身近な物を使って家でできる化学実験を紹介したり、化学の話をするブログです。

研究室での一年間の生活~ある化学系研究室の一年間~

 これから研究室に配属されるけど不安に思っている人や研究室が

どんなところなのか知りたいと思う人は多かれ少なかれいると思います。

自分は学部4年生の一年間と大学院(修士課程)の2年間の合計3年間を

研究室で過ごしたので、その経験をもとに研究室での1年間の

生活(活動)なんかを書いていきたいと思います。

また、最後の方に研究生活の一週間と1日をザックリと書いておきます。

加えて自分が過ごしてきた研究室だけだと情報が少なかったりなどするため、

他の研究室に配属していた友人の経験も含めて書いていこうと思います。

自分が過ごしてきた研究室は恐らくゆるい部類に入ると思いますが、

世の中にはブラック企業に負けないぐらいヤバい研究室もあれば

ものすごく緩い研究室もあります。

そのため、ここで書かれている内容はあくまでも、"そういう研究室もあるよ"

という前提で読んで頂きたいです。

 

 

 

4月

 学部4年生となり卒業研究のために研究室生活がスタートが始まります。

研究室配属後、初めの2週間~1か月は練習実験を行い、研究で必要な

器具や試薬、測定機器の使い方を学びます。

練習実験が終了後、各自に研究テーマが与えられます。

ここから、それぞれのテーマに沿って実験を行う日々が始まります。

 研究室がスタートする日は研究室ごとによって違います。

授業開始日からスタートする研究室もあれば、4月1日スタートの研究室もあります。

中には3月中にスタートする研究室もあったりします。

(色々とルールが厳しい研究室だと3月スタートだったりします)

 

5月~7月

 それぞれが、目標にむけてコツコツ実験を行う日々が続きます。

同時に卒業後に就職を考えている人は研究活動をしつつ就職活動を行っています。

(その年によって就活の時期は異なります)

卒業研究では、結果を出すために実験を行うだけではありません。

先行研究など知識を深めるために、各自が当番制で自分のテーマに関連する

最新の論文を紹介したりします(論文紹介や雑誌会と呼ばれます)。

加えて、英語で書かれた研究室で取り扱う分野の専門書を区分けして担当ごとに

翻訳して発表する勉強会も行われます(輪読や輪講と呼ばれます)。

 GW(ゴールデンウィーク)はしっかりと休める研究室もあれば、GWの休みが無い

研究室もあります。特に生物に関わるような研究室は生物の世話をするために

休めなかったり、どこかの日に登校する必要があったりします。

 GWが開けると、研究室に来るのが嫌になってしまい登校しなくなってしまう

人が出てくるかもしれまん。学部1年~3年生の時と違って(基本)平日は拘束され、

規則正しい生活をするようになるため、慣れることができないことが原因だと

思います。

 

8月

 学部1~3年生は夏休みですが研究室での夏休みは平均2週間というところが

多いです。中には1か月休みという太っ腹な研究室もあれば3日あるかどうか

という研究室もあります。

(GW同様に生物が関わる研究室は休めない場合が多いと思います)。

 この時期は卒業研究発表会まで半分ということもあり、8月or9月に前期までの

進捗発表も兼ねたリクリエーション(合宿)が行われたりします。

 

9月

 卒業研究の後半戦が始まります。人によっては前期であまり結果が出ずに

悩む人がいると思います。困ったら同じ研究室のスタッフ(教員、大学院生)に

相談しましょう。たぶん大学院生の方が年も近いため相談しやすいと思います。

個人的には、ここからどう進めていくのかが挽回する重要なタイミングだと

思っています(勿論、10月から頑張って挽回した人もいるので頑張りましょう)。

 

10月~11月

 それぞれが少しずつ良い結果を出してくる時期になります。

中には運悪くなかなか良い結果が出ない人もいると思います。

良い結果が出なくて困っているのであればなるべく早めに指導教員へ相談しましょう。

ちゃんとした教員であれば真摯にアドバイスを頂いたり、最終的な目標の変更を

してくれたりします。

 

12月

 だんだん卒業研究発表会が近付いているということもあり、

不足しているデータを取るための実験を行ったりします。

同時に卒業発表会へ向けて少し発表資料を作成し始めます。

研究室によっては後期の進捗・結果のまとめを発表する場があったりします。

(進捗報告会の後に、忘年会という研究室が案外多いかと思います)

 年末年始はさすがにしっかりと休みを取るという研究室が多いです。

(生物が関わる研究室は生物の世話のために登校するところもあります)

 

1月

 基本的に、卒業発表会へ向けて資料の作成と発表の練習を行います。

同時に一年間の成果をまとめた卒業論文の作成も進める必要があります。

(卒業研究発表会の後に卒業論文を作成する研究室もあります)

人によってはデータが一部不足しているため、大急ぎで実験を行ったりします。

 

2月

 1月下旬~2月上旬に一年間の卒業研究の成果を学科の先生方の前で発表します。

それぞれの発表の後に質疑応答の時間が設けられますが、たまに他の研究室の先生や

大学院生からイジワルな質問をされることもあります。

 発表後、何回か教員の直しを受けながら卒業論文を完成させます。

卒業後に就職をする人は、持ち込んだ自分の私物の持ち帰りやサンプルの整理など

片づけを終えれば一年間の研究室生活を終えて春休みに入ります。

厳しい研究室だと3月もしくは入社前日ぐらいまで来させる研究室もあります。

 

(2月中旬~)3月

 就職する人は、社会人になるまでの最後の時間をそれぞれ謳歌すると思います。

また、多くの人たちは友人や恋人たちと卒業旅行に行くと思います。

勿論、大学院(内部&外部)に進学する人たちの中にも、就職する人たちとの

思い出作りのために卒業旅行に行ったりもしています。

 就職する人たちが春休みを満喫している中、大学院へ進学する人は

卒業論文終了後も研究活動を続けています。

また、人によっては3月中に行われる日本化学会の年会で発表するために

補足データ集めや発表資料の作成と練習を行います。

 

研究室生活の一日(コアタイム10:00~18:00の場合)

あくまでも個人に意見ですが、遅い時間に実験は事故に繋がりやすくなります。

実験を行う時間を計画を立てて、終わったら早く帰って休みましょう。

7:30~8:30 起床、朝食、登校準備

8:30~9:30 研究室へ移動

9:30~12:00 実験、論文調査、ゼミ(論文紹介、輪読、進捗報告)

※自分は測定機器の順番待ちをしたくないため30早く登校しています

12:00~13:00 昼食

13:00~17:30 実験、論文調査

17:30~18:00 データの整理、片付け

※たまに、1~2時間残って実験をする日もあります

18:00~19:00 帰宅

19:00~24:00 夕食や入浴など色々

24:30 就寝

 

研究室生活の一週間のイベント

休日にバイトをしている人が多いかもしれませんが、心身の健康を考えて

週に1日はゆっくりと休める日にしましょう。

※基本的に月~金は実験や論文調査を行っています。

月:研究進捗報告会(隔週)と論文紹介(前期で1~2つ紹介)

火:輪読(隔週)

水:特になし

木:特になし

金:(隔週で研究進捗報告会の資料作り)

土:休み(ごく稀にサンプル確認のために午前登校)

日:休み

 

最短半日で綺麗な結晶を作る(蒸気拡散法を使った結晶作り)

イントロ

 以前、このブログで綺麗な結晶を作る方法についての記事を書きました。

その記事で「③他の溶媒を混ぜる方法」という項目で紹介した結晶の作り方の

実例を紹介します。

今回は身近な物を使用して誰の家にもある(はずの)食塩と比較的に

入手しやすい物質として硫酸アンモニウムの結晶の綺麗な結晶を作ってみます。

紹介する実験は早くて1日、長くて1日半あれば終わるため、今年の夏休みのように

短い日数や冬休みに自由研究をやる人の役に立てれば幸いです。

 

今回は実験のやり方についての紹介になりますが、余裕があれば簡単な解説を

追加または解説用で別の記事を作成する予定です。

 

 

必要なもの

アセトン&除光液&硫酸アンモニウムを除けば家に在ったり、

100円ショップで購入できるものです。
・大きめのガラス製の容器

・大きめのガラス製の容器に入るサイズの小さいガラス製容器

・適当なガラス容器などの容器×2

・コーヒーフィルター…結晶を作りたい物質にゴミなど含まれる場合使用

・ろう斗(ロート、じょうご)…結晶を作りたい物質にゴミなど含まれる場合使用

・ラップ

・輪ゴム

・結晶を作りたい物質(今回は食塩と硫酸アンモニウム)

・アセトンまたはアセトンが入った除光液

…アセトンの代わりにエタノールや燃料用アルコールでも代用できます

エタノールはコロナ渦が収まってから使って方が良いです

 

実験方法・やり方

※使用する容器によって水や結晶を作りたい物質、アセトンの量は異なります。

 参考として私が行った時の量を記載しておきます。

※アセトンは有機物を溶かす性質があるため、プラスチック製の物に触れたり

 こぼさないよう注意してください。

①少量の水に結晶を作りたい物質を溶けきれなくなるまで溶かす。

今回は食塩と硫酸アンモニウムをそれぞれ水5mlに溶かしました。

②結晶を作りたい物質を水に溶かした際に水が濁っていたり、

 ゴミが混ざっている場合は③の操作を行う。濁りやゴミがなければ④の操作に進む。

③コーヒーフィルターとろう斗を組み合わせたもので結晶を作りたい物質を

 溶かした水をろ過する。

④大きめのガラス製の容器に入るサイズの小さいガラス製容器に

 結晶を作りたい物質を溶かした水を少量入れる。

※なるべく壁面に水滴がつかないように静かに入れてください。

※稀に結晶ができない事があります。万が一結晶ができない事を想定して

結晶を作りたい物質を溶かした水を複数のガラス容器に分けることで

結晶ができないリスクを低減できます(私が2本に分けてやった理由です)。

※私は約10ml小さいガラス製容器4本用意し、4本中2本に食塩を溶かした水2ml、

 残りの2本に硫酸アンモニウムを溶かした水を2ml入れました(図1)。

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図1:左の2本は食塩水、右の2本は硫酸アンモニウム水溶液。

どちらも透明なため区別できるように硫酸アンモニウム水溶液の方には

セロハンテープを貼ってある(マジックだとアセトンで消えるため)。

⑤結晶を作りたい物質を溶かした水を入れた小さいガラス製容器に

 入れられることができる量のアセトンを大きめのガラス製容器に入れる。

※私が行った場合ですが、イメージとしては図2のようになります。

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図2 大きめのガラス製容器に入れた小さいガラス製容器

左の2本には食塩水、右の2本には硫酸アンモニウム水溶液が入っている

※⑤のアセトンの量(A)を式で書くと以下になります。

A=小さいガラス製容器の体積ー入れた結晶を作りたい物質を溶かした水の体積

※私は約10ml小さい容器を4本使ったので小さいガラス容器の体積は10ml×4本=40ml。

 小さいガラス容器4本に2mlずつ入れた結晶を作りたい物質を溶かした水を入れたので

 入っている水は2ml×4本=8ml。

 よって小さいガラス製容器4本に入るアセトンの量は40ml-8ml=32mlとなります。

 (実際に使用したアセトンの量は後の事を考えて25mlです)

⑥アセトンを入れた大きめのガラス容器に小さいガラス容器入れる。

⑦大きめのガラス容器にラップを被せて輪ゴムで止める。

⑧半日~1日待つと小さいガラス容器の中に綺麗な結晶ができている事を確認する。

※待っている間、時々確認すると結晶が出てくるのを確認できるますが

 なるべく揺らしたりしないでください。

 

硫酸アンモニウムは2本中の1本は綺麗な柱状の結晶ができました(図4の左)。

食塩(塩化ナトリウム)では2本とも綺麗な立方体(見た目は正方形)の結晶ができました。

また、2本中の1本では結晶の成長する(大きくなる)方向が一方向であることで生じる

柱状の結晶が確認されました(図5、残りの一本はうまく撮影できなかった)。

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図3 半日(12時間)後の写真

左2本が硫酸アンモニウム水溶液を入れた容器、右の2本が食塩水を入れた容器。

それぞれの容器の中に結晶ができていることが確認できる。

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図4 硫酸アンモニウムの結晶

左は綺麗な結晶ができたので成功、右は大きい結晶ができたが綺麗でないため失敗

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図5 食塩(塩化ナトリウムの結晶)

綺麗な結晶ができたため成功

一般的に知られている立方体の結晶に加えて柱状の結晶も確認できた。

 

更新履歴(試験導入)

2021/1/4 更新履歴と参照記事へのリンク及び操作④の注意事項追加

2020/12/31 記事投稿

 

自由研究で十円玉を綺麗にする実験は違法!?

はじめに

 夏休みの自由研究では色々な実験が行われています。

その中で定番の一つに十円玉を洗剤や調味料で綺麗にする実験があります。

この実験は本当に身近にあるもので、しかも半日以内で結果を

出せるということもあり、多くの人が行っていると思います。

また、サイトやYoutubeで多くの人が、この実験を紹介しています。

しかし、多くの人がやっている自由研究ネタなのにも関わらず、

法律上アウト(犯罪)になる可能性があります。

 

 

何故、十円玉を綺麗にすることが犯罪になるのか?

 貨幣損傷等取締法という法律があります。

この法律の第1項に

「貨幣は、これを損傷し又は鋳つぶしてはならない。」とあります。

これは言い換えると

「貨幣を傷つけたり、高温にして溶かしてはダメ」ということになります。

この法律と十円玉が綺麗になる事がどのように関係してくるかについては

次の十円玉が綺麗になる原理を知っておく必要があります。

 

調味料や洗剤で十円玉が綺麗になる原理について 

 十円玉を綺麗にする実験の原理についてザックリと説明します。

十円玉は銅という金属(と少量のスズ、亜鉛という金属)を原料に作られています。

十円玉は使っていると表面に酸化銅などの錆で覆われてくるため

だんだん見た目が汚くなってきます。

汚くなった十円玉を調味料や一部の洗剤に浸すと、表面を覆っていた

錆だけが調味料や洗剤中の酸に溶けて取り除かれます。

その結果、錆びの内側にあった(錆びてない)部分が新しい表面になるため、

十円玉が綺麗になったように見えます(つまり綺麗になる理由は還元ではない)。

 ここで、錆びる前の十円玉の重さと、錆びた後に綺麗にした十円玉の重さを

比較してみると「錆びる前の十円玉>綺麗にした十円玉」になります。

これは、"元々は十円玉の一部"であった錆が取り除かれてしまったからです。

文章だけでは解りずらいと思うので、上記の内容を大げさに描いたのが

下の図1になります。

 

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図1:一番左は錆びる前の十円玉、真ん中は錆びた十円玉(緑色の部分は錆を表す)、

一番右は綺麗にした(錆を取り除いた)十円玉を大げさに表したイラスト。

 

十円玉を綺麗にすることの問題点

 錆びた十円玉を綺麗にするということは元々十円玉の一部であった部分を

取り除いてしまうことになります。

そのため、貨幣を損傷していることに該当する恐れがあります。

(※十円玉が自然と錆びることは故意に損傷しているわけではないため問題は無い。

書くまでも無いが、わざと錆びさせることは損傷する事に該当する。)

また、錆びる前と比較して重量が減っているということは銅の量が

減っていることになるため、十円玉としての価値を下げていることになります。

 

 

綺麗な結晶の作り方(自由研究から、たぶん実験室レベルまで)

イントロ

 ミョウバンや塩などの結晶を作る人は自由研究の定番の一つだと思います。

本ブログでも色々な物質を作り、結晶として取り出す実験を幾つか紹介しています。

この記事では綺麗な結晶を作る幾つかの方法をご紹介します。

構成として前半は簡単な用語の解説、後半は結晶の作り方の説明を書いています。

結晶の作り方の一つについては実例を別の記事で紹介しています。

気になった場合はそちらも読んでみると良いと思います。

基本的に前半部分は何となく見ておいて、後半でわからなくなったら読み返す

程度で良いと思います。

 

iedejikken.hatenablog.com

 

綺麗な結晶について

 綺麗な結晶には以下の二つの意味があります。

①"見た目が"綺麗な結晶

②"純度が"綺麗な結晶

この記事では基本的に自由研究向けであるため①の綺麗な結晶を作る方法を

紹介しています。但し、後半で紹介する方法については研究室でも結晶を作る際に

用いられている基本的な方法(誰もが知っている手法ですが)であるため、

単結晶X線回折用の試料作りで悩んでいる人の役に立てれたら幸いです。

 

 

そもそも、結晶とは何か

 結晶とは物質を構成している原子、イオン、分子が規則正しく周期的に

並んでいる固体の事を言います。"ここで周期的に並んでいる固体"と書きましたが

世の中には原子などが不規則に並んでいる固体が存在しており、非晶質または

アモルファスと呼ばれています。

 

溶媒と溶質、溶液について

 何かしらの物質が溶けている液体の事を溶液と言います。

溶液において溶かしている液体の事を溶媒と言います。

そして、溶媒に溶けている物質の事を溶質と言います。

溶媒と溶質、溶液について具体例を挙げると塩を水に溶かしたものは溶液になります。

そして、水は塩を溶かしている液体になるため溶媒、塩は溶媒(水)に溶けている

物質なので溶質になります。

※溶質は必ずしも固体とは限りません。溶質が気体や液体の場合もあります。

また、液体同士を混ぜ合わせたもの(溶液)の場合、体積が多い方が溶媒になります。

 

溶液について

 溶液は使用している溶媒をわかるようにするために「溶媒の名称+溶液」と

呼ばれることが多くあります。溶媒が水の場合は水溶液と呼ばれます。

溶媒がエタノールならエタノール溶液と呼ばれます。

●●溶液という呼び方だけでは溶けている物質(溶質)が何か解りません。

溶質の情報を入れる場合は「溶質の名称+溶媒の名称+溶液」と呼びます。

例として塩化ナトリウム(食塩の主成分)を水に溶かしたものは

「塩化ナトリウム水溶液」よ呼ぶことになります。

 

溶解度と飽和溶液

 コップに入れた水に塩を入れていくとあるところで溶けきれなくなってしまいます。

このように溶媒には溶質を溶かせる限界の量があります。

ある溶媒に限界まで溶かせる溶質の量を溶解度と言います。

一般的に溶解度は溶媒100g当たりの量が記載されます。

そして、溶解度まで達している(これ以上溶質を溶かせない)溶液の事を

飽和溶液と言います。

 溶解度で注意するべきことは同じ溶質と溶媒の組み合わせでも温度が

異なれば溶解度も変わるという事です。

例として、スクロース(砂糖の主成分)は10℃の水100gに195g溶けますが、

40℃の水100gには235g溶けます。

(一般的に溶媒の温度が上がると溶解度が上がるものが多いが、

逆に溶媒の温度を上げると溶解度が下がる物質も存在する)

加えて、溶質が同じでも溶媒が異なれば溶解度も異なりますし、

溶媒が同じでも溶質が異なれば溶解度は異なります。

 

結晶ができるときについて

 溶液から結晶ができるという事は、その溶液は飽和溶液となっており、

溶けきれなくなった分が結晶になっていることになります。

そのため、結晶を作るということは何かしらの方法で溶液の溶解度を

下げてあげる必要があります。溶解度を下げる操作はゆっくりと

行うと大きくて綺麗な結晶ができやすくなります。

 

 

 結晶ができる際には何かしらの核となるものが必要であり、

核を中心に結晶は大きくなっていきます。

溶液中にホコリなどが混入や不純物の固体が残留していると、これらを核として

結晶が成長します。溶液中に不純物の固体が含まれているとそれらを核として

結晶が成長した結果、見た目は粉末状の細かい結晶が大量にできやすくなります。

そのため、綺麗な結晶を作る際には前もって溶液をろ過して不純物の固体をできるだけ

除去しておく必要があります(ろ過しなくても見た目が綺麗な結晶ができる場合も

あります)。

 

 

結晶の作り方

 ここから結晶の作り方について基本的な3つの方法(①~③)を紹介していきます。

 ⓪ろ過をする

 自由研究で結晶を作る際に地味に行われていませんが、結晶を作る前に

ろ過を行っておくと綺麗な結晶ができやすくなります。

①濃縮を使う方法

 結晶を作りたい物質の濃い溶液を置いておくと、溶媒が徐々に蒸発していきます。

やがて、溶けていた溶質が残っている溶媒に対する溶解度を超えるため、

超えた分が結晶として出てきます。

 

ポイント1:

ホコリやゴミの混入を防ぐためにティッシュやペーパータオルを被せること。

(ティッシュを使うと自身の細かい繊維が混入することがあります)

もしも、キムワイプやプロワイプがあればこちらを使用する。

(被せたものは風で飛ばないように輪ゴム等で固定する事)

 

ポイント2:

風通しの良い場所に置くとやや早く濃縮されるため結晶ができるまでの

時間を少しだけ短くできる。

実験室であればドラフトチャンバー無いに置いておくと結晶析出までの

時間をやや短くできる(試料が汚染される可能性があるため注意!)

 

ポイント3:

溶液の濃度が低いと飽和溶液になるまでに時間がかかるため、加熱して濃縮する事で

結晶が出てくるまでの時間を短くすることができます。

但し、加熱によって溶質が分解するなどの問題がある場合は行うことができません。

温度調節可能な実験用オーブンが使えるなら、低い温度で加熱してゆっくりと

濃縮するという方法もあります(定期的に見ないと乾固するので注意)。

また、ロータリーエバポレーターを使って濃縮するという手もあります。

 

②温度を変える方法

一般的に、温度が低くなるにつれて溶解度は小さくなります(例外あり)。

結晶を作りたい物質の溶液を冷却すると、溶けていた溶質が

その温度の溶解度を超えるため結晶として出てきます。

 

ポイント1:

冷却してもすぐに結晶が出てこないことがある。

場合によっては2~1週間後に出てくることもあります。

 

ポイント2:

複数の低い温度が用意できるなら試すこと。

但し、溶媒の凝固点(溶媒が水なら凍る温度)以下に原則しない。

実験室に複数のインキュベータや実験用の冷蔵庫があるなら、

溶液を複数に分けてそれぞれの温度(例、冷凍庫、5℃、10℃、15℃)で置いておく。

 

③他の溶媒を混ぜる方法

塩水にエタノールを加えていくと溶けていた塩が細かい結晶(見た目は粉末)として

出てきて沈みます。

エタノールは水に溶けることができますが、塩はエタノールに溶けません。

そのため、塩水にエタノールを加えていくとエタノールに塩が入っているような

状況になるため塩が溶けることができずに出てきます(本当は別の理由出てきます)。

塩水へ非常にゆっくりとエタノールを加えていくと、ある時点で溶解度を超えて

出てきた塩の小さい結晶を核として結晶が大きくなっていくため綺麗な結晶が

できやすくなります。

このように使用している溶媒とは別の溶媒を入れて溶解度を下げることで

結晶を作ることができます。

この際、溶解度を下げるために加えられる溶媒を貧溶媒と呼びます

(逆に溶質を溶かすのに使用している溶媒は良溶媒と呼びます)。

普通、結晶にしたい物質の溶液に貧溶媒を一気に入れると、見た目は粉末状の

細かい結晶が沢山できてしまいます。

貧溶媒を加えて大きな結晶を作るには貧溶媒がが少しずつゆっくりと

混ざるようにする必要があります。

大きな結晶を作るために貧溶媒を加える方法としては主に以下の2つがあります。

(1)貧溶媒を蒸気にして少しずつ結晶にしたい物質の溶液へ溶かしていく方法

(2)結晶にしたい物質の溶液の上に貧溶媒の層を作り(つまり2層になる)、

 放置して少しずつ貧溶媒を混ぜる方法。

 

(1)の方法(蒸気拡散法)について

 小さな容器に結晶にしたい物質の溶液(例えば塩水)を入れておきます。

一方で大きな容器に揮発しやすい貧溶媒(=結晶にしたい物質を溶かさない溶媒)

(例えばエタノール)を入れておきます。

貧溶媒を入れた大きな容器に結晶にしたい物質の溶液が入った小さな容器を

入れて密閉しておくと、大きい容器に入れておいた貧溶媒が少しずつ蒸発するため。

大きな容器内は貧溶媒の蒸気で充満した状態になります。

充満した貧溶媒は小さい容器内の溶液に少しずつ溶けていきます。

最終的に小さな容器内は大きな容器に入れておいた溶媒がある程度入った

状態になるため、溶媒に溶けていた物質の結晶として出てきます。

 このように密閉空間内でを貧溶媒を蒸発させて結晶を作る方法を

蒸気拡散法と言います。

蒸気拡散法での結晶の実例を知りたい場合は以下の記事を参考にしてください。

iedejikken.hatenablog.com

(2)の方法について

 容器に(濃い目の)結晶にしたい物質の溶液を入れて置き、ここへ静かに貧溶媒を

入れると(うまくいけば)溶液は2層になった状態になります。

この状態で放置しておくと2層は少しずつ混ざり合っていきます。

貧溶媒が混ざった結果溶解度が下がるので結晶が出てきます。

貧溶媒は必ずしも揮発しやすいとは限りらないため、揮発しにくい貧溶媒を

使う際にこの方法は使うことができます(揮発しやすい貧溶媒でも行えます)。

 

ポイント1:

結晶を作る際に、どの溶媒が結晶を作りたい物質を溶かせるか(=良溶媒になるか)、

溶かせないか(=貧溶媒として使えるのか)を知る必要があります。

 

ポイント2:

良溶媒と貧溶媒として使える溶媒が解ったら、結晶にしたい物質を良溶媒に溶かし、

どの貧溶媒との組み合わせで綺麗な結晶ができるのか確認を行います。

 

ポイント1&2について実験室でやる場合の参考例

Step1 沢山の5mlのバイアル瓶またはオートサンプラー用バイアル瓶を用意する。

Step2 結晶にしたい試料をスパチュラのスプーンの部分の1/4~1/3(多いかも)を

          Step1で用意したバイアル瓶に入れていく。(オートサンプラー用バイアル瓶の口    は狭くスパチュラじゃ入れることが不可のため1/4に切った薬包紙を使って入れる)

Step3 試料を入れたバイアル瓶1本に対して1種類の溶媒を1mlずつ入れていく。

     (マイクロピペッターを使えば楽に測って入れられます)

          どのくらい溶け残った場合も1/3ぐらい溶けたなど記録すると後で役に立ちます。

Step4 バイアルの蓋を閉めて軽く振り溶解するか確認する。

     溶解に時間がかかる物質もあるため、最低でも1日静置して確認する。

   光や室温で分解する物質もあるため静置する場所は考えておくこと。

   押し込むタイプの蓋のサンプル瓶だと揮発性の溶媒を中に入れた際に

   蒸発した溶媒の圧で蓋が飛ぶ可能性があるため使用は避けた方が良いです。

Step5 どの溶媒に試料が溶解するのか、溶解しないのかを記録する

Step6 試料を溶解できる溶媒と溶解できない溶媒が混ざるのかどうかを調べる。

     実際に確かめなくてもネットで調べると汎用溶媒については表として

     出てくるので参考にすると時間と試薬が無駄にならずに済みます。

   ※表にはジエチルエーテルとDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)が混ざると

    書いてあるものもあるが実際にはエーテルが少ししか溶けない。

Step7 Step6から混ざる組み合わせを探す。組み合わせの中で試料を溶解しない溶媒が

   揮発しやすい(=沸点が低い)ものであるなら、その組み合わせで蒸気拡散法を

           行える。試料を溶解しない溶媒の沸点が高い場合、(2)の方法で結晶を

   作成してみる。

Step8 結晶を作成する際には1つの溶媒の組み合わせ行う場合、試料の溶液を

   三つに分けて蒸気拡散法を行う事。

   結晶作成は条件が同じでもうまくできるとは限らないため、試料の溶液を

   分割せずに行うと一つの条件本当にうまくいくのか解らなくなる。

 

Step9 (2)の方法で結晶を作成する場合、試料の溶液を入れた容器の上から

   貧溶媒を入れて2層にするのが難しい人がいるかもしれない。

   その場合は、ギリギリまで試料を入れた小さいサンプル管を

   大きい容器に入れ。サンプル管の口よりも少し上になるまで

   貧溶媒を大きい溶液に加えて放置することで難易度は低下する。

 

Step10 基本的であり非常に重要な事であるが、結晶にしたい試料の溶液は

    前もってろ過を行っておく事。

   不純物の粒子や埃などが混入するとそれを核にして結晶が成長するため

   粉末状の結晶しか生じない場合がある。

   結晶作成する際に使用する溶液の量は少ないため、紙のろ紙を使った

   ろ過を行うよりもシリンジに取り付けるタイプのフィルターを使う方が

   お勧めです。このフィルターは紙のろ紙よりも孔径が小さいので

           より多くの固体を除去できます。

 

文字数が多いので一応ここまでにしておきます。

この記事では一般の人向けをメインに結晶を作りの知識にあたる事を書きました。

多分、(実験室でやる)結晶を作るやり方について別の記事で書いた方が

良いと感じたのでやる気と時間があったら書いてみようかなと思います。

 

 

更新履歴(試験導入)

2021/1/23 不足していた本文の追加と修正

2021/1/17 不足していた本文の追加と修正

2021/1/15 更新履歴と参照記事へのリンク及び、本文修正

2020/11/24 記事投稿

 

(仮)サマリウムコバルト磁石からレアアース(サマリウム)を分離してみる 前編

イントロ

 このブログでは身近な物を使ってレアアースであるセリウムとランタン、

ネオジムを取り出す実験を紹介しています。

これまで紹介してきたレアアースを取り出す方法を利用して、

サマリウムコバルト磁石からレアアースであるサマリウム

取りだそうとしたところ想定と異なる結果が得られました。

まだまだ調査中の実験になりますが紹介させて頂きます。

 

(↓高校化学以上を習得している方向けイントロ補足)

当ブログではネオジム磁石中のネオジムや発火合金中のセリウム・ランタンを

硫酸アンモニウム複塩として取り出してきました。

上記と同様の手法でサマリウムコバルト磁石中のサマリウム

硫酸アンモニウム複塩として取り出すことを試みたところ

予想とは異なる結果が得られたため、現段階で解っていることを報告する。

今回、報告する実験は過去に紹介してきたレアアースを取り出す実験と比較して、

材料コストや要する時間が大きいため、あまり回数を調査があまり行えて無い。

 

 


必要な物・用意するもの

サマリウムコバルト磁石 1個…東急ハンズやホームセンターで購入できます。

     (この実験では、直径:約2.2cm, 内径:約1cm、厚さ:0.2cmの製品を使用)

・トイレ用洗剤…成分に塩酸とあるもので色が付いていないタイプ。

・精製した硫酸アンモニウム…ホームセンターや通販で購入した硫酸アンモニウム

             事前にこの記事のやり方で不純物を取り除いたもの!

・最低100ml入るガラス製の容器 1個…高さが7.5cm以上ある洗ったジャムの空き瓶など

※無ければポリエチレン(PE)性のボトル(精製水のボトル)を上から5cmの所で

カットしたものでも代用することができます。

・最低200ml入るガラス製の容器 1個…綺麗に洗った洗ったジャムの空き瓶など

・ガラス製の容器 1個…最低100mlの水が入る綺麗に洗ったジャムの空き瓶など

・液体の体積が測れる道具…メスシリンダーなど。金属製の物は使用厳禁!

・プラスチック製のマドラーやスプーン…100円ショップなどで購入できます。

                   金属製の物は使用厳禁!

・天秤(0.1gまで測れるタイプ)…キッチングッズを販売している店で購入できます。

・強力磁石(ネオジム磁石またはサマリウムコバルト磁石) 1個

ネオジム磁石なら100均で買えます。

・ラップ

ティッシュ

・輪ゴム

・スポイト(あると便利です)


実験方法・やり方

① 高さが7.5cm以上あるガラス溶液にサマリウムコバルト磁石を1個入れる。

② ①にトイレ用洗剤を70ml加える。

③ ラップを被せ、輪ゴムで止める(輪ゴムを捻って二重に止めない!)

③ 時々、円を描くように容器を回して中の液体が混ざるようにしながら48時間待つ。

④ 48時間後、磁石の形は無くなり、赤い液体と黒い粉が残っていることを確認する。

⑤ 容器の(外側の)底に強力磁石を当てると磁石を当てた所に黒い粉が集まる。

⑥ 容器の底に当てた磁石をゆっくりと円を描くように動かして黒い粉を集める。

⑦ 強力磁石で黒い粉が流されないように注意しながら最低200ml入るガラス製の容器に

  赤い液体をゆっくりと移しいれる。

⑧ 赤い液体に約8.4gの精製した硫酸アンモニウムを少しずつかき混ぜながら加える。

⑨ 赤い液体が濁っていき、粉のようなものが底に溜まるのを確認しても5分間混ぜる。

⑩ 容器にラップを被せて、半日ほど置いておく。

⑪ 容器をゆっくりと傾けて、赤い液体を別のガラス容器に移しいれる。

※そこに溜まっている粉状の物が必要なので流されないように移しいれる事。

⑫ 容器に残った粉状の物に水24mlにトイレ用洗剤6mlを加えたものを用意する。

⑬ ⑫の液を10mlを容器に溜まっている粉に加えて素早くかき混ぜる。

⑭ 大部分の粉が沈んでから上澄み液を別のガラス容器に捨てる。

⑮ ⑬と⑭を後2回行う(ピンク色だった粉が黄緑色の粉になる)。

⑯ 60~75mlの水と1mlトイレ用洗剤を加えて完全に黄緑色の粉を溶かす。

⑰ ティシュを被せて輪ゴムで固定し、風通しの良いところに置いておく。

⑱ 季節にもよるが1週間以上経つと緑色の結晶ができてくる。

⑲ 結晶が液面に出る手前まで置いておいて水が減るのを待つ。

⑳ 結晶を取り出し、表面を軽く水で濯ぐ。

㉑ 結晶を乾燥させる。

 

後編(解説 作成中に進む)

 

2日間で青い結晶(酢酸銅)を作る 解説編

イントロ

 実験編では身の回りの物を使って青い結晶(酢酸銅)の作り方を紹介しました。

解説編では実験の原理、具体的には何が起こったのかについて説明していきます。

短時間で書き上げた記事となるので実験編も含めて記事のクオリティに関しては

恐らく今まで書いた記事に劣っていると思います。

そのため、近いうちに原理について追加したり細かい点を修正したする予定です。

 

 

一日目(午前)では何が起きているのか? (一日目(午前)の操作①~⑩)

 このブログで紹介している「調味料や洗剤で汚い十円玉は還元できない?」を

閲覧した方であれば気が付いたかもしれませんが一日目(午前)では水酸化銅(Ⅱ)を

作る操作を行っているます。水酸化銅(Ⅱ)を作る方法は幾つかありますが、

この実験では電気分解を利用しています。

 電気分解は電気を流す液体に電源に繋げた二つの電極(金属や炭素のような電気を

流すもの)を入れて化学反応を起こす事を言います。

今回の実験において、電気を流す液体は食塩水、電極は銅(銅線)になります。

 電気分解で電源の+極に繋げた電極では電子を失う反応が起こります。

一方、電源の-極に繋げた電極では電子を受け取る反応が起こります。

電極に銅を使って食塩水を電気分解すると+極に繋げた銅線では、

銅が電子を失って銅(Ⅱ)イオンが生じる反応が起こります。

Cu→Cu²⁺ + 2e⁻ (銅→銅(Ⅱ)イオン + 電子)

一方、-極に繋げた銅線では水が電子を受け取って水素と水酸化物イオンに分解する

反応が起こります(そのため、-極に繋げた銅線では食塩水中に気泡が生じている)。

H₂O + 2e⁻→H₂ + 2OH⁻ (水 + 電子→水素 + 水酸化物イオン)

これらの反応によって、食塩水中にはCu²⁺(銅(Ⅱ)イオン)とOH⁻(水酸化物イオン)が

供給されることになります。

Cu²⁺はOH⁻と出会うと水に溶けにくいCu(OH)₂(水酸化銅(Ⅱ))という物質を生じます。

Cu²⁺ + 2OH⁻→Cu(OH)₂ (銅(Ⅱ)イオン + 水酸化物イオン→水酸化銅(Ⅱ))

この物質は水色をしているため、一日目(午前)の操作⑩の後に

ガラス容器の底面を見てみると茶色の物に混じって水色の沈殿が見られます。

 

茶色い物の正体は何なのか?

 茶色い物の正体は銅の粉や銅の小さな塊です。今回の実験で+極に繋いだ

銅線では銅から銅(Ⅱ)イオンが食塩水中に供給される反応が起きています。

これは銅線が少しずつ溶けて行っている=腐食されていることと同じです。

その結果、銅線の表面は部分的にボロボロになって剥がれ落ちることで

銅の粉や銅の小さなか塊ができます。

また、電気分解を続けていると陰極では水から水素と水酸化物イオン

生じる反応だけでなく銅(Ⅱ)イオンから金属の銅が生じる反応が起こります。

Cu²⁺ + 2e⁻→Cu

この反応によって-極に繋いだ銅線の表面に銅が付着することになります。

この付着した銅は部分的に取れやすくなっており、一部は銅線を外れて

銅の小さな塊となってしまいます。

 

一日目(午後)では何を行ったのか? (一日目(午後)の操作①~⑥)

 一日目の(午前)で作った水酸化銅(Ⅱ)は食塩水の中に沈んだ状態になっています。

今回の実験で必要なのは水酸化銅(Ⅱ)であるため、食塩は要らない物質になります。

加えて、青い結晶を作る段階で食塩が残っていると青い結晶に混じって食塩の結晶が

紛れてしまう可能性があります。食塩の結晶が混じってしまうのを防ぐために

一日目(午後)の操作①~⑥では食塩を取り除く操作を行っています。

酸化銅(Ⅱ)は水に全く溶けない物質ですが、食塩は水によく溶ける物質です。

そのため、食塩水の上澄み液を捨てた後、水を加えて上澄み液を捨てる操作を

繰り返すことで食塩の大部分を取り除く事ができます。

 

お酢の除草剤を加えると何が起こるのか?(一日目(午後)の操作⑦~⑩)

 先に結論から書くと今回結晶として作りたい物質である酢酸銅(Ⅱ)ができます。

お酢の除草剤にはお酢の主成分である酢酸(化学式:CH₃COOH)が含まれています。

酸化銅(Ⅱ)に酢酸を加えると酢酸銅(Ⅱ)(化学式:(CH₃COO)₂Cu)という水溶性の

物質が生じます。

2CH₃COOH + Cu(OH)₂→(CH₃COO)₂Cu + 2H₂O (酢酸 + 水酸化銅(Ⅱ)→酢酸銅(Ⅱ) + 水)

 お酢の除草剤を加えると、茶色の物が減っていることに気が付くと思います。

茶色の物は銅の粉と小さな塊から成りますが、食塩を取り除く操作で水酸化銅(Ⅱ)と

混じった状態になっています(一日目(午後)の操作①~⑥)。

茶色の物の中の水酸化銅(Ⅱ)は(お酢の除草剤中の)酢酸に反応して無くなるため、

結果として茶色の物の量は減ることになります。

 

何故、青い結晶ができるのか?

 密閉容器に酢酸銅(Ⅱ)が溶けた水を入れた容器とアセトンを一緒にしておきます。

すると、アセトンは揮発しやすいため密閉容器内に気化したアセトンが充満して

いきます。また、アセトンは水によく溶ける物質であるため気化したアセトンが

少しずつ酢酸銅(Ⅱ)が溶けた水に溶け込んでいきます。

その結果、酢酸銅(Ⅱ)を溶かしていたものが水では無く水とアセトンの混ざった

液体になります。酢酸銅(Ⅱ)はアセトンに溶けることはできますが、水と比べると

溶かせる量は少ないです。そして溶け込んだアセトンの量があるところを超えると

酢酸銅(Ⅱ)は溶けきれなくなって固体(結晶)として出てきます。

アセトンが溶けるにしたがって溶けきれなくなって固体として酢酸銅(Ⅱ)は

出てくるので時間が経つにつれて酢酸銅(Ⅱ)の結晶の量が増えたり、

結晶のサイズが大きくなったりします。

 今回のように結晶にしたい物質が溶けた液体(今回は水)とその液体に混ざることが

できる揮発性の高い液体を一緒に密閉して結晶を作る方法を蒸気拡散法といいます。

分子の形や並び方を知る方法として結晶にX線を当てて、得られたデータを処理する

方法があります(単結晶X線構造解析)。この方法を行うには塩粒よりも少し小さい

宝石のように綺麗な結晶が必要です。

しかし、作った物質の綺麗な結晶を作ろうとしても粉のような細かい結晶や

表面にデコボコだったりヒビのあるような結晶しかできないこともあります。

そのため、綺麗な結晶ができない場合、蒸気拡散法で使う液体の組み合わせを

変えたり等、色々な方法を試すことがあります(ちなみに著者も苦労した一人です)。

2日間で青い結晶(酢酸銅)を作る 実験方法編

イントロ 

 短い時間で行える自由研究を求める人が多いような気がするため、

身近な物を使って2日間で綺麗な青色の結晶を作る実験をご紹介します。

また、今年の夏休みは新型コロナウイルスによる影響で例年と比較して短く、

自由研究が無い学校もあったりします。

例年の比べて短い夏休みの中、自由研究やる人の役に立てれば幸いです。

 このページでは実験の方法について書いていきます。実験の解説については

解説編で書いていきます。

 

 

必要なもの

アセトン&除光液を除けば家に在ったり、100円ショップで購入できるものです。

・銅製の針金

・9V電池

・塩

・水道水

・プラスチック製の使い捨てスプーン

・100mlの液体を入れられるガラス製の容器(ジャムの瓶など)

・200ml以上入るガラス製の容器(ジャムやインスタントコーヒーの空き瓶)

・小さいガラス製の容器(図1の左の瓶)

・小さいガラス製の容器が入る大きめのガラス製容器(図1の右の瓶)

お酢の除草剤

・スポイト(100円ショップの習字コーナーにあります)

・アセトン(ドラッグストアやホームセンター)orアセトン入りの除光液

・ガラスor金属製の計量カップまたは金属製の計量スプーン

・ラップ

・輪ゴム

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図1 左:小さいガラス製容器(50ml)、

右:小さいガラス製容器が入る大きめのガラス製容器(200ml)

※プライバシーの関係上、加工した画像を使用しています。

 

実験方法・やり方

これから扱うものは基本的に金属を錆びさせる性質があるものなので

必要なもので上げたものを除いて金属製の物に触れないようにしてください。

1日目(午前)

①銅製の針金をペンや鉛筆に巻き付けて、図2のように長さ5cmぐらいのバネを作る。

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図2 銅製の針金で作ったバネ

 

② バネが付いた銅線をバネから20 cmぐらいのところで切る。

③ ①と②で作ったものをもう一つ作る(バネのついた針金が2本できる)。

④ 100ml程の水が入るガラス製容器にバネ状の大部分が付かるぐらいまで水を入れる。

⑤ ②に食塩二つまみを入れて溶かす。

⑥ 二本あるバネ付いた針金のうち、1本の針金部分を9V電池のー極に

  巻き付けて取り付ける。

⑦ 二本あるバネ付いた針金のうち、もう1本の針金部分を9V電池の+極に

  巻き付けて取り付け、セロハンテープで取り付ける。

⑧ バネの付いた針金のバネの部分を⑤の食塩水に入れる。

※二つのバネが触れ合わないようにする。場合によってはセロハンテープで固定する。

⑨ 2時間半待つ。

⑩食塩水からバネの部分をゆっくりと引き上げる。

 

1日目(午後)

① 200ml以上入るガラス製の容器を用意する。

② 1日目(午前)の⑩のガラス容器をゆっくりと傾けて、茶色の物が流れ出ない

  範囲で上澄み液を200ml以上入るガラス製の容器へ流しいれる。

・Point プラスチック製のスプーンを伝わらせると垂れずに入れられます。

③ 茶色の物が入っているガラス容器に水道水50mlを入れる。

④ 茶色の物が沈むまで10~15分待つ。

⑤ 上澄み液を200ml以上入るガラス製の容器へ流しいれる。

⑥ ③~⑤を後、2回行う(一番最後の上澄み液はできる限り取り除く)。

⑦ 茶色の物に5mlのお酢の除草剤を少しずつ加える。

     お酢の除草剤を加えたものには金属を腐食する作用があるので注意

⑧ 溢さないようにゆっくりと混ぜ合わせる。

⑨ 茶色の粉が沈むまで10~15分待つ。

⑩ スポイトを使って水色の上澄み液を小さいガラス製の容器に移し入れる。

⑪ 小さいガラス製の容器が入る大きめのガラス製容器を用意する

⑫ ⑪で用意した容器に20~30mlのアセトンを入れておく。

※アセトンはプラスチックなどを溶かすので金属orガラス製のもので

 測り入れてください。

⑬ ⑩で上澄み液を入れた小さいガラス製の容器を⑫の容器に静かに入れる。

⑭ 大きい方のガラス容器にラップを被せて輪ゴムで止める。

 

2日目

① 水色の液体の中に塩粒、場合よっては大きい青色の結晶が有ることを確認する。

    うまくいっていれば画像のように結晶ができます。

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※もしも、結晶を集めたい場合は二つの点に注意して以下の方法で行う。

   注意1:青色の液体は一部を除いて金属を腐食する性質があるため、

                金属製の物に触れないようにする。

   注意2:結晶は長い間空気中にさらされると崩れる可能性があるため、

        液体から出して密閉容器に入れるまでの時間は短くする。

② 別のガラス製容器に上澄み液を流しいれる。

③ 直ぐに結晶の表面についた液体をキッチンタオル等で拭きとる。

④ 密閉できるしっかりとガラス製の容器に入れて密閉する。

    ※②で回収した上澄み液を置いておくと青茶色い結晶ができます。

 

解説編に続く