家でできる実験

身近な物を使って家でできる化学実験を紹介したり、化学の話をするブログです。

【最短1時間】身近な物で黒いガラス?(ホウ砂球)を作ってみよう

イントロ

 ドラッグストアと100円ショップで入手できる物を使って

黒いガラスのような物を作る実験方法について紹介します。

また、終わりの方では実験の解説についても書いていきたいと思います。

※実験にはガスコンロが必要です。IHのコンロではできません。

この実験は下記リンクの実験の少し発展したものになりますが、

うまくいけば1時間以内で終わらすことができます。

iedejikken.hatenablog.com



 

必要な物

・太さが9mmぐらいのステンレス製の針金(100円ショップで購入できます)

・ラジオペンチ(ステンレス製の針金を切る用。100円ショップで購入できます)

・定規(普通の15cm測れるもので大丈夫です)

・ホウ砂(ドラッグストアや薬局などで購入できます。ホウ""ではないです)

ビタミンB12入りの目薬(赤い色の目薬)

・弁当に使ったりするアルミカップ

・アルミ箔

・陶器製の皿

・スプーン(ホウ砂や目薬に触れるので気にする人は使い捨ての物を使いましょう)

 

実験方法・やり方

丁寧に書いているので作業量が多いように感じますが、実際には少ないです。

① ラジオペンチを使って約13cmの長さでステンレス製の針金を切る。

  ※手を切ったり、切った針金の端を体に刺さないように注意してください。

  ※失敗した時に備えて切った針金を3本用意すると良いと思います。

② イラスト(図1)のように切った針金の端から1.5cmの所でまげて輪っかを作る。

  ※ラジオペンチの先の部分を使って、挟んで曲げるとやりやすいと思います。

図1:輪っかを作った針金

 

③アルミカップに小さじ1/3~1/2杯(約0.5g)のホウ砂を入れる。

④アルミカップに入れたホウ砂にビタミンB12入りの目薬を5滴加える。

 ※一か所に5滴かけるのではなく全体へ5滴かける感じ。

⑤目薬を含んだホウ砂を軽くかき混ぜる。

⑥大きめにカットしたアルミ箔を半分の半分の半分に折る(=8枚重ねになる)。

⑦陶器製の皿に⑥で用意したアルミ箔を載せる。

⑧陶器製の皿に載ったアルミ箔の上に⑤で用意したアルミカップを載せる。

⑨ガスコンロに火をつける。

⑩②で輪っかを付けた針金の輪っかの部分をガスコンロの青い火で

 赤くなるまで加熱する。

 ※針金の火に入れた部分とその近くは熱くなっているので触らないでください。

⑪針金の輪っかの部分が赤くなったら、素早く針金の輪っかの部分を

 目薬と混ぜ合わせておいたホウ砂に触れさせる。

⑫ホウ砂が付いた針金を火に入れ、「ジュー」という音がしなったら

 火から離すのを繰り返す。この時、ホウ砂を付けた方を上にして加熱を行う。

⑬「ジュー」という音がしなくなったら火に入れたまま加熱する

⑭ある程度、火に入れて針金についていたホウ砂が膨らまなくなったら

 ホウ砂を付けた反対側と付けた側を交互に上にして加熱を行う。

⑮針金を火から出してホウ砂を付けた側が綺麗な丸い膨らみになっているか確認する。

 もしも、綺麗な丸い膨らみが無い場合は、その面を下にしてして再度加熱を行う。

⑯針金を火から出して反対側を確認する。もしも表面がイラスト(図2)のように

デコボコが見られた場合、その面を下にして再度加熱を行う。

また、イラスト(図3)のように穴が開いた状態になった場合、

針金の輪っかの部分が赤くなるまで再度加熱を行ってから⑪の操作に戻る。

図2:表面の一部にデコボコができた時のイメージ

表面にデコボコが生じたときはデコボコした面を下にして

加熱を行うとデコボコは無くなる

 

図3:穴ができたしまった時のイメージ
    穴が生じたときは針金の輪の部分が赤くなるまで加熱後、

穴の部分に目薬を含むホウ砂をくっ付けて加熱する事で塞ぐことができる

 

⑰30秒程、針金を手に持ったまま空中で冷やしてから、陶器製の皿に載せた

 アルミ箔上や乾いた流しなど熱に強い所において完全に冷ます。

 

⑱写真(図3)のように表面が黒くて綺麗なつるつるになっている事を確認する。

 ※作ったガラスのような物の表面は傷が付きやすく、割れることがあります。

  表面が汚くなりやすいので、冷めたらすぐに観察した方が良いです。

図3:最終的にできる黒いガラスのようなもの

表面が汚くなりやすいので冷めたら早めに観察した方が良い

 

解説と仮説

 原理はホウ砂球反応の実験と同じなので基本的にはそちらを参照してください。

詳細は後述しますが、色が付いた理由についてはリンク先とは異なるので

注意が必要です。

iedejikken.hatenablog.com

 

・目薬を入れたホウ砂を火に入れると黒くなる理由は?

操作⑫~⑭辺りで目薬を含んでピンク色になっていたホウ砂が黒くなったり、

少し焦げ臭い匂いがする時点で気が付いた人がいるかもしれません。

目薬には様々な成分が含まれており、それらは有機物です。

一般的に有機物は加熱すると分解して黒色の炭が生じます。

つまり、火の熱で目薬の成分が分解して炭になったため、

黒くなったように見えたわけです。

 

・何でガラス状のものに色がついたのか

ホウ砂の熱分解で生じたガラス状のもの(メタホウ酸ナトリウムと酸化ホウ素)に

目薬を加熱する事で炭が取り込まれた事によります。

もう少し書くと、目薬の成分から生じた炭は細かい粒子であり、

ガラス状のものに全体的に含まれているため黒いガラスのように見えます。

 

ビタミンB12を含まない目薬でも同じようなものが作れるのか?

普段、使っている目薬がビタミンB12を含むものなので、

断言できませんが原理上、同じようになると思われます。

これを確認するのも一応は自由研究のネタになるかもしれません。

 

・青みがかって見える?

光の加減で青く見えている可能性が大きいです。

ただし、ビタミンB12にはコバルトを含み、コバルトを使ってホウ砂球反応を行うと

青色(青色のシリカゲルみたいな感じ)になります。

そのため、ビタミンB12由来のコバルトによって青く見える可能性が僅かにあります。

 

・綺麗に保存するには?

ホウ砂球は吸湿性があるため、放置しておくと空気中の水分によって

見た目が悪くなることが知られています。

そのため、長期間綺麗な状態で保存するには作ったホウ砂球を中を乾燥状態にした

密閉容器に入れておく必要があります。

ただし、今回作った黒いホウ砂球は表面が傷つきやすいのか、

すぐに表面が汚くなりやすいです。

確証はありませんが、作って(冷ましてから)表面を水を含まないニスのようなもので

コーティングすることで綺麗な状態を保てる可能性があります。

 

あとがき

そもそも、この実験は(以前、記事に書いた物を除いて)ホウ砂球に色を付けることが

できる身近な物を探す過程で偶然見つかったものになります。

コバルトを使うと青いホウ砂球を作れるため、身近な物でコバルトが含まれる物として

ビタミンB12入りの目薬(そもそもビタミンB12の含有量が少ない事、有機物の分解で

黒くなるため、失敗すると予想していた)で行った所、青いホウ砂球は作れません

でしたが綺麗な黒いホウ砂球ができたので紹介することにしました。

現在は、青いホウ砂球を作るためにコバルト化合物を合成を行っています。

コバルト化合物は合成できるるものの不純物の分離や簡便さが問題になっています。

そこをクリアできたのであればコバルト化合物の合成方法だけでも

紹介できたら良いかなと思っています。