家でできる実験

身近な物を使って家でできる化学実験を紹介したり、化学の話をするブログです。

肥料用の硫酸アンモニウムを精製する&硫酸アンモニウムの結晶を作る

イントロ

 このブログで紹介する実験のいくつかでは硫酸アンモニウムという物質を

使います。硫酸アンモニウムは(窒素)肥料として使われている物質で、

ホームセンターや通販サイトで「硫酸アンモニウム」または和名の略称である

「硫安」という商品名で販売されています。

肥料用としての硫酸アンモニウムには製造時に混入した不純物が

含まれているため、そのまま実験に使うことができません。

そのため、純度をよくするための下ごしらえ(ろ過と再結晶による精製)を

しておく必要があります。

また、ここで紹介する方法では最終的に硫酸アンモニウムの綺麗な

結晶ができるため、結晶作りに興味がある人やちょっとした自由研究には

(たぶん)向いているかもしれません。

 

 

必要な物

・硫酸アンモニウム(硫安)…ホームセンター等で購入できます。

・精製水…ドラッグストア等で購入できます。水道水でも代用できます

・耐熱性ガラス容器 2個…綺麗に洗ったジャムの空き瓶など

・プラスチック製のマドラーやスプーン…100円ショップ等で購入できます。

・小さい鍋

・コーヒーフィルター

・ろう斗(ロート、じょうご)…100円ショップで購入できます。

・ティシュ

・ラップ

・輪ゴム

 

実験操作・やり方

① 耐熱ガラス容器にろう斗を入れ、ろう斗にはコーヒーフィルターをセットしておく。

② ①とは別の耐熱性ガラス容器の半分ぐらいまでお湯を入れる

② お湯を入れた耐熱性ガラス容器に硫酸アンモニウムをかき混ぜながら入れる

  ※硫酸アンモニウムがお湯に溶けるとお湯の温度が下がります。

③ 硫酸アンモニウムが溶けきれなくなったら、普通のお湯を入れた鍋に

  ②の耐熱ガラス容器を入れて湯煎をする。

  ※耐熱ガラス容器がお湯に浮いて、ひっくり返らないように注意する。

④ 湯煎しながら耐熱ガラス容器内をかき混ぜる。

⑤ 溶け残っていた硫酸アンモニウムが溶けて無くなった場合、

  溶けきれなくなるまで、硫酸アンモニウムを追加で加えてかき混ぜる。

  初めから、湯煎しても全く溶けない場合は⑥に進む。

⑥ 硫酸アンモニウムが溶け残っているのを確認したら湯煎をやめる。

⑦ 硫酸アンモニウムが溶けているお湯を①で準備したろう斗とコーヒーフィルター

  の組み合わせでろ過する。

⑧ ⑦でろ過したお湯が入っている耐熱ガラス容器にラップを被せて

  室温ぐらいになるまで冷ましておいてから冷凍庫に入れる。

⑨ 一晩経つと硫酸アンモニウムの結晶が容器内側の底面と壁面に確認できる。

⑩ 耐熱ガラス容器をゆっくりと傾けて中に入っている水と浮いている氷を捨てる。

⑪ 硫酸アンモニウムの結晶が入った耐熱ガラス容器にティシュで蓋をして

  風通しの良いところに数日間置いて乾燥させると肥料よりも純度が良い

  硫酸アンモニウムになる。

 

実験操作の解説

ろ過

 今回、肥料用の硫酸アンモニウムの純度を高めるためにろ過と再結晶という

操作を行いました。実際にやってみて気が付いたと思いますが、肥料用の

硫酸アンモニウムには黒や茶色の粉が混じっています。

硫酸アンモニウムを溶かした水(お湯)をコーヒーフィルターでろ過することで

この粉を取り除くことができます。

 

再結晶

ろ過は液体(今回だと水)に溶けない物質を取り除いたり、取り出したりする事は

できますが、液体に溶けている不純物を取り除くことはできません。

そのため、再結晶という方法を行いました。温度によって溶けきれる量が

異なることを利用した分離(精製)方法です。

具体的に言うと硫酸アンモニウムに限らず塩や砂糖といった水などの液体に

溶ける物質の量は物質ごとで異なります。

そしてある量の液体に溶けることができる物質の質量を溶解度といいます。

加えて内容が重複しますが溶解度は温度によって異なります。

水100g当たりの硫酸アンモニウムの溶解度は0℃で70.5g、80℃で94.1g、

100℃で102gになります。そのため、100℃の水100gに硫酸アンモニウム

102g溶かしておいて、この水を0℃に冷やします。

0℃の水100gには70.5gしか硫酸アンモニウムは溶けることはできないので

102-70.5=31.5gの硫酸アンモニウムが溶けきれなくなって固体として出てきます。

ここでもしも、硫酸アンモニウムよりも溶解度が大きい(=よく溶ける)不純物が

含まれていた場合、不純物は水に溶けたままになるため不純物を除去できます。

 

補足

 再結晶の原理で、不純物は液体(今回は液体)に溶けたままになります。

けれども、操作⑪時点の硫酸アンモニウムの表面は不純物が含まれている

水で濡れています。そのため、本来であれば不純物が含まれる水を

取り除く必要があります。

実験室レベルの実験であれば、表面に付着した不純物を含む液体を

除去する操作を行います。

具体的には、生じた結晶をろ過で集めてから、(ろ紙上の)結晶に

不純物が含まれていない液体をかけて表面の不純物を洗い流す操作(洗浄)を

行います。ただし、論文によっては作った物質の結晶を洗浄しないものも

あったりします。

今回の場合、硫酸アンモニウムという水に溶けやすい物質を扱うことや

初めてやる人でも楽にできることを考えて洗浄操作を省きました。

加えて、洗浄操作を省いても紹介する実験に問題無いことは確認しています。